2024年

12月

04日

能登半島地震による仏像の応急処置 

 

当工房は半年前から能登半島地震で破損した仏像の応急処置活動をしています。

先月まで穴水町に行っていましたが、そちらは全て終わり、今回は七尾市のお寺様になります。

 

御住職から許可をいただきましたので、その様子を少し紹介したいと思います。

 

 

こちらは地震で破損した仏像の一部。

 

破損した仏像を見ながら段取りを決めていきます。今回は1人なので要領よく進めていかないといけません。


午後から違う場所の応急処置予定がありますので間に合うように考えていきます。

 

 

 

接着は膠を使います。

 

膠は後に修理をする際に剥がしやすいので今後のことを考えて使用します。

 

膠は固形のものを湯煎して刷毛で付け貼り合わせます。その後圧力をかけていきます。

 

冬場は直ぐに乾いてしまいますので膠を調整していく必要もあります。

また圧力のかけ方も少しコツが必要です。

 

 

蓮弁の破損

 

どこのお寺様も蓮弁の破損がありました。

 

蓮弁は下から上の方に行くに従って蓮弁の大きさが違いますので大きさを確認しどこの位置につくのかを決め接着していきます。

 

 

光背の破損

 

先端の反りがある光背は、地震でこのような壊れ方をします。他のお寺様では、もっとバラバラになっているところもあり、部品を探すところから始まります。

 

今回は全て、部品がありました。

 

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2024年

11月

25日

仏像の応急処置 能登半島穴水町は無事に終わりました。

国の文化財レスキュー事業になります。
こちらのお寺様は6月に3体の応急処置が終わっています。
前回は地震によって動かせなかった本尊の金剛界大日如来坐像、胎蔵界大日如来坐像、地蔵菩薩像の応急処置になります。
御住職の許可をいただいたのでその様子を報告をさせていただきます。

 

 

台座の破損状況が予想より酷く、特に蓮弁は触れば落ちてしまう状態でした。光背や本体は6月に元通りに応急処置してあります。


こちらは破損した蓮弁の一部です。本来、存在していた部分に取り付けるのですが、そう簡単にはいきません。

 

他の部分も補強しないといけない状態でした。

 

破損した台座の一部

 

2つの台座とも同じような破損の仕方です。

 


一度、全体を確認し工房のアシスタントさんと、どのように進めていこうか考えていきます。

この方法で行こうと決めますが。。。

 

想定外の破損も見つかり、もう一度違う方法で進めていくこともありました。

 

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2024年

11月

15日

仏師が彫り出す念持仏 

 

今回のご依頼は念持仏です。

 

平癒の願いを込め、ひと彫りひと彫り想いを込めて彫り出しました。常に触っていただけるように木の材料も変えています。工程動画を最後に載せていますのでよろしければご覧下さい。

 

 

今回使う木材の山桜です。毎日、触っていくと味が出てきます。

念持仏はこちらの木材をおすすめしています。

 

 

先ずは輪郭を彫り出します。

いつもは木曽檜のお仕事が多いので、少し苦戦しました。小さく硬い木材は固定が難しいので固定用の木をつくって荒彫りをしていきます。

 

 

輪郭を出し、叩きのみで形を出します。

 

 

今回の木材は硬いのでいつも以上に荒彫りで細部を彫り出します。常に持ち運びできるように壊れにくいデザインになります。足先は壊れやすいのであまり前に出さないようにしています。

 

この段階でもう雰囲気が出てきます。

 

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2024年

11月

09日

仏師が彫り出す弥勒菩薩半跏思惟像 中宮寺タイプ

 

今回は個人のお客様からのご依頼です。

 

常に拝める念持仏のご依頼もあります。

 

今回は顔に重点を置いた仏様のご依頼になります。いつもより念入りの工程を踏みます。

 

また木材によって雰囲気も変わりますので山桜から彫り出す仏様の様子も紹介します。最後に工程動画も載せておきますので、そちらの様子もご覧いただけると嬉しいです。

 

 

今回はお客様と相談して木で彫る前に粘土で確認してもらうことになりました。

木彫りは質量を減らしていく工程に対し、粘土は付け足していく工程になりますので少し勝手が変わります。

こちらの粘土も何回も修正しています。

 

 

その後、顔だけを山桜で彫り雰囲気を確かめます。趣のある雰囲気が出ます。

 

 

木取り

 

少し木目が流れている部分がありますので木取りで調整していきます。

 

 

鋸や叩きのみで輪郭を出しました。流れていた木目も綺麗になっているので安心です。

 

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2024年

11月

01日

仏師が彫り出す木彫りの本尊 薬師如来立像

 

千葉県習志野市 習雲山瑠璃光院薬師寺様から本尊 薬師如来立像のご依頼をいただきました。

また開眼法要も行いましたのでその様子も後ほど紹介します。

 

 

 

こちらのお寺様には本尊の秘仏があります。

 

秘仏とは本来は厨子に入っており一般的に見ることの出来ない仏様です。

 

そこで本尊をより身近に感じてもらうために御前立仏(礼拝者に見せる像)を迎えたいとご住職から当工房へご連絡がありました。

 

ご依頼のきっかけは15年前に仏像を納めたお寺様のご紹介です。本当にありがたいです。

 

 

御前立仏を迎えるにあたって

 

どのような形で安置して拝むのかを、ご住職と入念に打ち合わせしました。とても素敵な演出があるので最後に紹介します。

秘仏は金箔の仏像ですが木のままの像を迎えることになります。将来的に金箔を貼ることも考えた彫りをしていきます。

 

金箔を貼る場合は、まず下地調整をします。その段階で少し像が細くなります。そこで漆塗りをした上で漆で金箔を貼ります。漆が溜まりやすいところは彫刻のラインを出すために1ミリ深くしておくなど考えながら彫ります。また台座、光背、本体など入り組んだ場所は分解して塗る事が出来るようにしてあります。

 

こうしておくと修理もしやすくなります。

 

ここからは工程の紹介です

 

 

秘仏の大きさを確かめ図案にします。台座、光背、本体など木材を切り分けます。木材は木目の細かい木曽檜です。本体に一番良い部分が来るように木取りします。

 

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2024年

10月

18日

石川県 能登半島地震 仏像応急処置

当工房は能登半島地震によって破損した仏像の応急処置活動をしています。

今回は仏像の修理ではなく国の文化財レスキューの支援の活動になります。

能登半島穴水町の仏像の応急処置も終わりが見えて来ました。
次回は違う町へ行きます。

活動の様子です。

破損している仏像の現状確認をします。
仏像は台座、光背、本体に分かれています。箇所に応じて応急処置する道具や方法も変わります。

 

現状をチェックし、どのように進めていくかを決めます。

 


美大生アシスタントにも共有し各自で手順よく進めてもらいます。台座は乾燥時間を多くとりたいので最初に手をつける事が多いです。使用する接着剤は膠になります。

不動明王の台座、光背、台座。


大日如来坐像 こちも破損が多い。

 


観音菩薩像 こちらも台座の破損が多い。

 


薬師如来坐像 手の破損と台座の破損。

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2024年

10月

11日

薬師如来立像 千葉県習志野市 本尊

今回のご依頼は秘仏の模刻になります。

秘仏とは厨子に納め本来は見ることの出来ない仏像です。

千葉県習志野市のお寺様から、本尊として皆さんが拝むことの出来る秘仏の模刻像のご依頼を承りました。


秘仏は金箔の像ですが今回は木の状態の像になります。
漆や金箔を貼る前の像をイメージして仏様を彫り出します。金箔を貼ると顔の印象は大きく変わりますので木の状態の仏像はどうなっていたかを想像してつくります。

後に金箔を貼る可能性もあるので、その点も考慮しています。

 

お寺様と相談しながら図案を描きます。

 

今回の仏様は台座が特徴的ですね。仏様に髭も描く予定です。

 

 

木材は木目の細かい木曽檜で質感も良いです。当工房は機械を使うことが少なく今でも手鋸を使用します。

 

音がとても心地よいです。後半に動画を載せてありますので是非聞いてみてください。

 

 

 

鋸で切り終わったら叩きのみで形を出します。

 


叩きのみでしっかりと形を出す事が大事になります。まだまだ顔も叩いて彫り出します。


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2024年

9月

18日

能登半島地震 穴水 仏像の応急処置活動

 

国の文化財レスキュー事業として能登半島地震で仏像の被害があったお寺様へお伺いしています。

 

今回は、基本的に修理・修復ではなく応急処置という活動になります。

 

前回は仏像の本体を中心に処置をしました。今回は台座になります。

 

 

台座の一部

 

八角形の台座は接合しているので、どうしても壊れやすい部分になります。

 

この部分を先に膠で接着します。

 

このままでは強度が弱いので補強もしておきます。

 

 

 

ここからは時間を短縮しながら台座の応急処置をしていきます。

 

アシスタントも場数を踏んできたので大まかな流れを指導したら自分達で考えて動いていきます。

 

細かな破損部分がありますので台座を分解しながらその都度、破損部分を合わせていきます。

 

細かい破損パーツが80個ほどありました。

 

 

 

前回、処置をした地蔵菩薩像と両大日如来像も台座にのせました。

 

台座の下部はまだ接着が終わっていないので補強ラップを巻いてあります。後ほど様子を見にいって取ろうと思います。

 

こちらに載せていない仏像の応急処置も2体ほどありますが全て終わりました。

 

 

 

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2024年

9月

03日

手のひらサイズの仏様 小さい仏像販売

今回のご依頼はデザインやシルエットのオーダーも含めた仏様になります。

台座はシンプルで光背がないので本体が際立ちますので宜しければ完成までの様子をご覧下さい。


今回のご依頼


石川県のお客様

仏壇はないのですが床の間に置いて、いつも心静かに拝む毎日を過ごしたいとお話しされていました。



図案を描きました。


使用する木材は檜の中でも質感、木目の細かさも含め最高級のヒノキである木曽ヒノキを使用します。木曽檜は木目の幅が狭く彫刻をする際に木目が目立ちません。彫刻の表現が際立ちます。

 

ノコギリや鑿で輪郭を出していきます。

この段階でとても良い香りがしてきます。

 

叩き鑿で形を出してきます。個人的に仏像彫刻の音が心地よくいつも癒されています。

 

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2024年

8月

11日

10月26日 本尊 薬師如来佛 開眼記念法要のご案内

当工房で真言宗豊山派寺院 薬師寺さまの本尊の模刻を手がけています。

 

本尊は秘仏となっており常に見ることは出来ません。そこで参拝可能な模刻仏像のご依頼をいただきました。

 

1026日にお披露目会がありますのでよろしければお立ち寄りください。

 

午前中は法話や開眼供養が行われます。午後からはイベントが開催されます。商店街の秋まつりの日に行うので盛り上がりそうです。

寺院は商店街の中にあります。とても雰囲気の良い場所です。


タイムスケジュールになります。

 

 

 

私も参加予定です。

 

今のところ午後2時から午後4時の間でワークショップをやる予定です。

 

【内容】

仏像の木材で自分の箸を作ろう

時間 30

予約制

 

ワークショップ以外にも仏像彫刻の相談なども受け付けています。

仏像を彫っているけど分からないからアドバイスが欲しいという方も大歓迎です。




事前の予約連絡をして頂けたら対応します。

 

この機会にお会いできる事を楽しみにしています。

 

 

 

275-0011 千葉県習志野市大久保1丁目1714

真言宗豊山派寺院 薬師寺

(商店街の中にあります)

 

最寄駅 京成大久保駅 徒歩3

 

予約はこちら

toshiharu.sakagami@gmail.com

 

 

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2024年

8月

07日

能登半島 穴水町 仏像応急処置活動 3

能登半島 穴水町のお寺様 仏像の応急処置活動

応急処置活動とは
能登半島地震によって破損した仏像を対象にしています。後に修復することを前提とした応急的な方法を施します。

当工房では基本的に合成接着剤は使わず膠(にかわ)を使用して接着していきます。

膠はお湯に浸けると剥がすことができます。そうすることによって分解して修復する事が出来ます。

だいぶ破損があります。他にも破損していたのですが写真は一部になります。

 

今回も、だいぶ破損があります。他にも破損していたのですが写真は一部だけです。

 

 

状態を確認して段取り良く進めて行きます。

移動は金沢駅から特急バスとタクシー移動ですので5〜6時間程しか時間がとれず、この時間で完成出来るように進めます。


こちらのお寺様は真言宗のお寺様ですので立派な大日如来坐像が2体ありました。


胎蔵界と金剛界の大日如来坐像になります。

御住職から写真の許可をいただきました。

 

破損していた頭部や足がくっつき嬉しそうに見えます。

次回も継続していきます

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2024年

6月

30日

能登半島 穴水町 仏像の応急処置


当工房では能登半島地震で被害の受けた仏像の応急処置活動を行っております。国の文化財レスキュー事業。

前回の活動に続き今回も穴水のお寺様になります。


穴水町は海が綺麗で晴れると気持ちが良いです。
実は先週から雨予報が続いていましたが、この日だけ綺麗に晴れ。

 


仏像の状態を確認しアシスタントと話し合って確認していきます。

破損状態が地震の大きさを物語っていました。
前回、訪れたお寺様の仏像と同じ壊れ方をしていました。

仏像を作る側として強度を考える機会にもなりました。

 


先人の技術を肌で感じつつ、先人の残した大事な仏様を残し続けていかなければならないと思うばかりです。

綺麗に組み立てることが出来ましたが写真は応急処置の様子だけにしておきます。写真の許可は御住職よりいただきました。


今回、使った膠は少し乾きが遅かったので近くのお寺様に行った際にもう一度、確認出来たらと思います。

読んでいただきありがとうございました。

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2024年

6月

27日

仏壇に納める仏像 故人のために迎える仏像販売

今回は故人の為に迎える仏像のご依頼です。

 

今回は薬師如来坐像になります。

 

一般的には家庭の仏壇に納める仏像は阿弥陀様やお釈迦様が多いのですが、薬師如来像に思い出があるという事でこちらの仏様になりました。大切な方の為に何か形を残してあげたいという気持ちが伝わります。

 

 

薬師如来とは

 

疫病やケガなど、痛みや苦しみから救ってくださる仏様と言われています。

そして左手を前に差し出し薬壺を持つことが多いです。

 



今回、使用する木材は木曽檜です。日本で古来から愛されているヒノキの中でも木目、質感が最高品です。

 当工房でもお勧めする木材です。


荒彫り

木から仏様を彫り出していきます。

 


大まかな形が出てきました

 

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2024年

6月

15日

能登半島 仏像応急処置


能登半島で地震の被害にあったお寺様の元へ行き仏像の応急処置をして来ました。国の文化財レスキュー事業です。

本当は直ぐにでも行きたかったのですが正式な手続きをとり許可がおりるのに時間がかかりました。

 


今回は穴水のお寺様へお伺いしました。

近くにもお寺様があるのでそちらも次回。


地震で倒れ破損している仏像が多くあり応急処置をさせていただきました。
1日で4体の仏様があり一人では難しいのでアシスタント3名を連れて行きました

 


本当は完成写真を載せたい所ですが、控えさせていただきます。

今回の活動では多くの方から支援を頂いた能登支援ステッカーの売り上げの一部を使わせていただきました。

このような活動が出来るのは皆様のおかげです。
ありがとうございました。

2024年

6月

01日

金箔の阿弥陀如来坐像

金箔の阿弥陀如来坐像のご依頼

個人のお客様です。金箔の仏像は漆を塗って金箔を貼るのでお時間が彫刻だけの場合と比べて2倍程かかります。

木彫りの阿弥陀如来坐像


金箔を貼る前の仏像です。

金箔の阿弥陀如来坐像


金箔を貼った状態

だいぶイメージが変わります。

金箔の阿弥陀如来坐像


顔の雰囲気も変わりました。

金箔は漆で接着していますので耐久性が高くなります。特に傷つけない限り数百年の耐久性が出ます。


そのような理由も含め、お寺様では金箔を貼ることもあります。

工程動画をYouTubeでまとめました。よろしければご覧下さい。

 

 

仏像の注文、問い合わせは気軽にご連絡ください。

 

仏師 坂上俊陽